次期学習指導要領答申について(中央教育審議会(第109回)資料より)
2017年4月25日追記
告示された次期学習指導要領一覧はこちらのサイトからご覧いただけます。
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2016年12月21日に行われました中央教育審議会(第109回)において、2020年度から始まる予定の次期学習指導要領の答申が、中教審北山禎介会長から、文部科学省松野博一大臣に手交されました。
12/28追)正式な答申についてはこちらの記事(←リンクしています)をご参考にしてください。
同中教審におきまして、文部科学省の藤原初等中等教育局長が主に説明されました、答申の【概要】「第1部 学習指導要領等改訂の基本的な方向性」の中で、アンダーラインが引かれているところを中心に、章立て・項目立てとともに掲載させていただきます。
※なお、ICT CONNECT 21 のWebサイト更新情報は、メールマガジンでもお伝えしています。
第1章 これまでの学習指導要領等改訂の経緯と子供たちの現状
(前回改訂までの経緯)
学力については、「ゆとり」か「詰め込み」かの二項対立を乗り越え、基礎的な知識及び技能、思考力、判断力、表現力等及び主体的に学習に取り組む態度という学力の三要素のバランスのとれた育成が重視されることとなった。
(子供たちの現状と課題)
・子供たちの学力については、国内外の学力調査の結果によれば近年改善傾向にある。
・情報化の進展に伴い、子供を取り巻く情報環境が変化する中で、視覚的な情報と言葉との結びつきが希薄になり、知覚した情報の意味を吟味したり、文章の構成や内容を的確に捉えたりしながら読み解くことが少なくなっていること、教科書の文章を読み解けていないとの調査結果があることなど、読解力に関する課題等も指摘されている。
・豊かな心や人間性を育んでいく観点からは、子供たちが様々な体験活動を通じて、生命の有限性や自然の大切さ、自分の価値を認識しつつ他者と協働することの重要性などを、実感し理解できるようにする機会や、文化芸術を体験して感性を高めたりする機会が限られているとの指摘もある。
第2章 2030年の社会と子供たちの未来
(予測困難な時代に、一人一人が未来の創り手となる)
・第4次産業革命ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている。
・いかに進化した人工知能でも、それが行っているのは与えられた目的の中での処理であるが、人間は、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え出すことができる。このために必要な力を成長の中で育んでいるのが、人間の学習である。
注)その他「2030年頃の社会」「「生きる力」の育成」という語句にアンダーラインが引かれています。
(「生きる力」の育成と、学校教育及び教育課程への期待)
注)「生きる力」にアンダーライン。
(我が国の子供たちの学びを支え、世界の子供たちの学びを後押しする)
第3章「生きるカ」の理念の具体化と教育課程の課題
1.学校教育を通じて育てたい姿と「生きる力」の理念の具体化
2.「生きる力」の育成に向けた教育課程の課題
(1)教科等を学ぶ意義の明確化と、教科等横断的な教育課程の検討・改善に向けた課題
・現行学習指導要領は、各教科等において「教員が何を教えるか」という観点を中心に組み立てられており、一つ一つの学びが何のためか、どのような力を育むものかは明確ではない。このことが、各教科等の縦割りを超えた指導改善の工夫や、指導の目的を「何を知っているか」にとどまらず「何ができるようになるか」に発展させることを妨げている背景ではないかとの指摘もある。
(2)社会とのつながりや、各学校の特色づくりに向けた課題
(3)子供たち一人一人の豊かな学びの実現に向けた課題
(4)学習評価や条件整備等との一体的改善・充実に向けた課題
第4章 学習指導要領等の枠組みの改善と「社会に開かれた教育課程」
1.「社会に開かれた教育課程」の実現
前章において述べた教育課程の課題を乗り越え、子供たちの日々の充実した生活を実現し、未来の創造を目指していくためには、「社会に開かれた教育課程」として次の点が重要になる。
①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
②これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓ひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
注)アンダーラインは②に引かれています。
2.学習指導要領等の改善の方向性
(1)学習指導要領等の枠組みの見直し
(「学びの地図」としての枠組みづくりと、各学校における創意工夫の活性化)
(新しい学習指導要領等の考え方を共有するための、総則の抜本的改善)
(2)教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現
(3)「主体的・対話的で深い学び」の実現(「アクティブ・ラーニング」の視点)
第5章 何ができるようになるか —育成を目指す資質・能力—
1.育成を目指す資質・能力についての基本的な考え方
2.資質・能力の三つの柱に基づく教育課程の枠組みの整理
教科等の目標や内容を以下の三つの柱に基づき再整理することが必要である。
①「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」
②「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」
③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」
3.教科等を学ぶ意義の明確化
各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすのが「見方・考え方」であり、教科等の教育と社会をつなぐものである。子供たちが学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせられるようにすることにこそ、教員の専門性が発揮されることが求められる。
4.教科等を越えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力
・全ての学習の基盤となる言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力などを、各学校段階を通じて体系的に育んでいくことが重要である。
注)「言語能力」「情報活用能力」にアンダーライン。
5.現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力
現代的な諸課題に対応して、子供の姿や地域の実状を踏まえつつ、以下のような力を育んでいくことが重要となる。
健康・安全・食に関する力
主権者として求められる力
注)他にもいくつか挙げられていますが、アンダーラインが引かれているのはこの2つの力です。
第6章 何を学ぶか —教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成—
・様々な資質・能力は、教科等の学習から離れて単独に育成されるものではなく、関連が深い教科等の内容事項と関連付けながら育まれるものであり、資質・能力の育成には知識の質や量が重要である。こうした考えに基づき、今回の改訂は、学びの質と量を重視するものであり、学習内容の削減を行うことは適当ではない。
第7章 どのように学ぶか —各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実—
1.学びの質の向上に向けた取組
・特に小・中学校では、多くの関係者による授業改善の実践が重ねられてきている。他方、高等学校、特に普通科においては、自らの人生や社会の在り方を見据えてどのような力を主体的に育むかよりも、大学入学者選抜に向けた対策が学習の動機付けとなりがちであることが課題となっている。今後は、特に高等学校において、義務教育までの成果を確実につなぎ、一人一人に育まれた力を更に発展・向上させることが求められる。
2.「主体的・対話的で深い学び」を実現することの意義
(「主体的・対話的で深い学び」とは何か)
・「主体的・対話的で深い学び」の実現とは、特定の指導方法のことでも、学校教育における教員の意図性を否定することでもない。教員が教えることにしっかりと関わり、子供たちに求められる資質・能力を育むために必要な学びの在り方を絶え間なく考え、授業の工夫・改善を重ねていくことである。
注)この後の説明で、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の説明があり、これらの語句にアンダーラインが引かれています。
(各教科等の特質に応じた学習活動を改善する視点)
・「アクティブ・ラーニング」については、地域や社会の具体的な問題を解決する学習を指すものと理解されることがあるが、例えば国語や各教科等における言語活動や、社会科において課題を追究し解決する活動、理科において観察・実験を通じて課題を探究する学習、体育における運動課題を解決する学習、美術における表現や鑑賞の活動など、全ての教科等における学習活動に関わるものであり、これまでも充実が図られてきたこうした学習を、更に改善・充実させていくための視点であることに留意が必要である。
(単元等のまとまりを見通した学びの実現)
・「主体的・対話的で深い学び」は、1単位時間の授業の中で全てが実現されるものではなく、単元や題材のまとまりの中で実現されていくことが求められる。
(「深い学び」と「見方・考え方」)
・学びの「深まり」の鍵となるのが、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」である。
3.発達の段階や子供の学習課題等に応じた学びの充実
・「主体的・対話的で深い学び」の具体的な在り方は、発達の段階や子供の学習課題等に応じて様々である。基礎的・基本的な知識・技能の習得に課題が見られる場合には、子供の学びを深めたり主体性を引き出したりといった工夫を重ねながら、確実な習得を図ることが求められる。
第8章 子供一人一人の発達をどのように支援するか —子供の発達を踏まえた指導—
1.学習活動や学校生活の基盤となる学級経営の充実
2.学習指導と生徒指導
3.キャリア教育(進路指導を含む)
4.個に応じた指導
5.教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育
6.子供の日本語の能力に応じた支援の充実
第9章 何が身に付いたか —学習評価の充実—
・今後、観点別評価については、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理する
第10章 実施するために何が必要か —学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策—
1.「次世代の学校・地域」創生プランとの連携
「チームとしての学校」の実現
2.学習指導要領等の実施に必要な諸条件の整備
(教員の資質・能力の向上)
注)「(教員の資質・能力の向上)」全体にアンダーライン。
(指導体制の整備・充実)
必要な教職員定数の拡充を図る
(業務の適正化)
学校現場の業務の適正化に向けた方策を着実に実施
(教材や教育環境の整備・充実)
・教科書を含めた教材についても、資質・能力の三つの柱や「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた視点を踏まえて改善を図る必要がある。
3.社会との連携・協働を通じた学習指導要領等の実施
(家庭・地域との連携・協働)
注)「(家庭・地域との連携・協働)」全体にアンダーライン。
※なお、答申の【概要】全文は、パートナーの教育新聞社の下記記事よりご覧いただけます。
https://www.kyobun.co.jp/commentary/cu20161216_01/
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